メンターDrインタビュー

このインタビューは歯科医師植田憲太郎の考え方や事業への理念を知るために、一般社団法人医業保全協会(代表理事 待鳥秀峰)により聞き取りが行われ、2021年に記事が作成されました。(内容は当時のものです)
【木川禎人先生】
話し手:木川禎人
聞き手:待鳥秀峰
編集:吉田馨
  • (待鳥)木川先生はいま、1日に何人ぐらいを治療されますか。
  • (木川)自費の患者さんが多いので、そんなに多くはありません。本院のうえだ歯科クリニック(以下UDC)、分院のHANA Intelligence歯科・矯正歯科(以下HANA)の両方ともに、多くて1日10人ぐらいです。普段は基本的に、1列のチェアを診ます。2列を診ることは、ほぼありません。
  • (待鳥)では、ひとりの患者さんあたりだいたい45分程度時間をかけて診療されているのですね。
  • (木川)そうですね。例えば、UDCにはチェアが6台あります。月曜日に勤務するスタッフは合計9人です。ドクターが6人、衛生士が3人。チェアは、衛生士の3台はすぐに埋まってしまいます。残った3台のチェアが、6人のドクター用です。だからドクター3人は「暇」ということもあります。その間にいろいろな勉強をしたり、症例検討をしたり治療計画を立てたり、先輩の治療を見学したり...ということができます。ほかの医院で働いたことはありませんが、抜群によい勤務条件だと思います。
  • (待鳥)木川先生は、専門医でも認定医でもありません。その立場で他の歯科医院へ行き、メンターとして教えておられます。どのようなことをされるのでしょうか?
  • (木川) 主にインビザラインの売り上げ向上プロジェクトを行っています。また、矯正相談のコンサルタントも行います。
    これまで矯正に関することは、専門医の先生に任せることが多かったと思います。専門医や認定医の先生を決まった日にクリニックへお呼びする。患者さんが矯正を受けられる日は、限られた日にならざるを得ませんでした。
    しかし、インビザラインは提供元アラインテクノロジー社の技術の向上により、専門医、認定医でなくてもできる症例の多い治療だと思います。私は、インビザラインに関する様々なことを、院内で独自に解決できるような仕組みづくりをお手伝いしています。患者さんがいつ来院しても、インビザラインの相談ができる。どのスタッフでも患者さんに説明できる。クリニック全体でインビザラインを導入するという形態です。
  • (待鳥)具体的に、仕組みづくりのなかでどのようなことが重要だと思われますか?
  • (木川)インビザラインでの売り上げを向上させていくためには、ドクターはもちろんですが、衛生士もインビザラインについて積極的に対応できるようになることは重要だと考えています。また、スタッフさん全員が矯正相談や説明が得意になると、患者さんのニーズが引き出せるようになるのでより効果的です。私はそれが実現できるよう今までの治療経験や文献から得た知識をドクターをはじめ、スタッフさんにお伝えしていきます。
  • (待鳥)専門医や認定医の先生から反発が出ませんか。
  • (木川)直接の攻撃や、抗議を耳にしたことはありません。でも私が専門医、認定医をとっていて、大学病院に残っていたら、否定的な気持ちになるかも知れません。
    私がやっているのは、矯正の専門医や認定医とは、方向がちがう医療だと思います。専門医や認定医のドクターは、みなお忙しい。だから先生方の手がとどかないところをフォローしたいと考えています。
    院内で矯正をあきらめる、あるいは矯正ができなくて困っている。そんなときクリニック全体で、矯正に関する理解を少しでも深め、積極的に取り組めるようになって頂きたい。そのためのお手伝いができれば嬉しいです。
  • (待鳥)お伝えするドクターには、木川先生よりもベテランがおられます。葛藤はありませんか。
  • (木川)予備校や学校で教えていたので、知識をお伝えすることに違和感はありません。教えることは好きみたいです。先輩ドクターにお教えするのはもちろん気を遣いますが、私にとってもいろいろな面で勉強になる経験なので、ありがたいと思っています。また、知識を共有することでお互いが成長していけるのであれば、キャリアは関係ないのではと感じます。
  • (待鳥)教えに行くときに目標にしていることはなんでしょうか。
  • (木川)インビザライン矯正について、医院スタッフみんなが考え、患者さんへも説明できるようになって欲しいと思っています。フィードバックのためのコメントや資料も、いつもその意識で作成しています。ベストなスタイルは医院ごとにちがいます。医院の理想像に近づけるよう一緒に考え、2年ぐらいで完全に治療の流れを定着させる。これが目標です。


    UDC、HANAでの経験のおかげで、新しい矯正装置やインビザラインに関する私の知識は日々アップデートされていきます。私の知識の共有が、日本の歯科医師界の技術発展にも役立てば、嬉しいです。
【Dr プロフィール】
大阪大学歯学部卒。医学部専門予備校講師(生物科)、歯科衛生士国家試験対策講座講師。歯科衛生士専門学校非常勤講師(薬理学)。大学在学中から医療法人UDCで歯科助手兼TCとして勤務。臨床研修終了後に医療法人UDCに入職し植田憲太郎他、専門の指導をうけて一般歯科・矯正歯科・インプラントの診療技術を磨く。

医療法人UDC理事/HANA intelligence歯科・矯正歯科勤務
歯科医師 木川禎人
【横田元煕先生】
話し手:横田元煕
聞き手:待鳥秀峰
編集:吉田馨
  • (待鳥)次は勤務形態についてですね。
  • (横田)大阪の医療法人UDC(以下UDC)、岐阜の医療法人LSC(以下LSC)、2つの医療法人で勤務医として週6日働いています。大阪は月火の週2日。岐阜は水、木、金、土の週4日です。

    日曜日は休みで、日曜日に、岐阜から大阪へ移動することもあります。卒後すぐ、大学病院に勤めていた頃は生活リズムが不規則でしたが、今は生活リズムが定まり、睡眠時間が増えました。規則正しい生活ができるようになり、嬉しいです。
  • (待鳥)診療では何を担当しておられますか?
  • (横田)なんでもやります。LSCには各専門医がたくさんいます。ですので、難しい症例に当たった時には専門医に相談しながら診療にあたることができています。UDCでは矯正やインプラント、補綴の割合が多いです。セレックがあり、院内技工所もあるので、技工物の製造過程も学ぶことができます。それぞれのいいとこ取りをして、保険診療だけでなく、様々な自費治療にも対応ができています。大阪では200万円、岐阜では340万円ぐらい現在売上を作れています。
  • (待鳥)今の働き方を選んだ理由はなんですか?
  • (横田) 大学時代から口腔外科が志望でした。卒業後は、奈良県の大学病院の口腔外科に2年間勤めました。そのとき以前からお付き合いがあったUDCの植田先生が「来年からどうするの?」と声をかけてくださいました。「口腔外科にいようと思います」とお返事したところ「一般の開業医も見学してみたら?」とアドバイスして下さったのがきっかけです。実際にいろいろな歯科医院に見学にも行きました。そして、今のような2つの医療法人で働く働き方を提案してもらいました。大学病院にも、もちろん魅力はありましたが、2つの医療法人で働くという新しい働き方に好奇心が湧き、今の働き方を選びました。
  • (待鳥)実際に、今の働き方を選んでみて、どういった感想をもちましたか?
  • (横田)2つの医療法人で働くということは、2人の理事長の元で働くということです。もちろん、治療方針や経営理念も違います。在籍している歯科医師層も異なります。また、大阪と岐阜と全く異なった土地柄ですので、患者層も異なります。医院規模も違います。どちらも成功されたクリニックですが成功の仕方が全くちがいます。経営に関する考え方もちがいます。やりづらそう...と感じる人もいるかもしれませんが、2つのちがう医院の事情を同時に知ることができ、大きな財産になっています。将来、開業したいと希望する歯科医師は多くいます。どこで開業するか、どういう形態の開業が望ましいか。そういったことに関して今私は、都会と地方それぞれの成功例を、一度に知ることができます。ありがたいなと思います。

    もちろん、デメリットもあります。移動時間です。大阪と岐阜の移動時間は、新幹線は2時間弱、車は3時間ほどです。「そんなに時間をかけて移動する意味はあるの?」と、まず聞かれます。しかし、移動時間は、勉強時間にもなります。新幹線移動ではデスクワーク、車での移動では勉強会の音声を聞きながら、メリハリがきく良い時間にもできます。
  • (待鳥)大阪と岐阜と、在籍している医師層が違うとのことですが、どういったところが違いますか?
  • (横田)大阪は同年代のドクターが多いです。ですので刺激があります。勉強をさぼると追い抜かれてしまう。「私は知らないのにあいつは知っている」。そうと思うと、負けずぎらいなので、勉強しなければとファイトがわきます。敵対心ではありません。良い意味で、お互いに高めあえていると思います。

    岐阜は一般クリニックですが、総合病院にいる印象です。ドクターの関わりがユニークなのです。専門分野が分かれていて、各専門のドクターを、積極的にクリニックへ呼び込まれています。専門ドクターが、診療や講義を直接して下さる。専門ドクターが何十人もいるわけではありません。けれど必ず連絡がとれるところにおられます。みなさん専門知識をお持ちです。私がどれだけ勉強しても、諸先生がどんどん先を歩いていかれる。後ろ姿を追いかける日々です。勉強すればするほど、自分が伸びる気がします。
  • (待鳥)大阪と岐阜では保険診療と自費診療の割合もそれぞれ異なるのでしょうか?
  • (横田)どの患者さんも、口腔内に関心をおもちですが歯への関心の程度が、土地によってまったくちがいます。

    大阪は、矯正やインプラント、自費が強いです。岐阜は、保険診療がベースです。口腔内が崩壊して、1本2本ではなく全部をさわる必要がある患者さんもおられます。1本から口腔内全体まで、多岐にわたる治療内容を経験できます。

    大阪では自費が、8:2、もしくは7:3ぐらいで多いです。岐阜は、昨年1年を振り返ると保険が多かったような気がします。7:3ぐらいで始まり、いまは半々ぐらいでしょうか。

    大阪と岐阜で、患者さんへのアプローチ方法をがらりと変えないといけません。大阪と岐阜で働くことによって、どんな患者さんがきても自信をもって対応できるようになってきた気がします。他の同年代の歯科医師と比べても比較的いろいろな経験をさせてもらっていると思います。
  • (待鳥)いま一番やりがいを感じるのは何ですか。
  • (横田)勉強です。大阪と岐阜、2つのちがう環境で学べることに、やりがいを感じています。

    先ほども申し上げましたが、大阪には同年代のドクターがいます。負けないように勉強しなければ、と思える環境です。岐阜は、教えてもらおうと思えば、専門医の先生方からなど色々な情報がすぐに入ってくる環境です。

    診療に入るまでの準備が、まず楽しいです。知り得た診療も、臨床の場ですぐに試せます。やればやるだけ身につくし、実践もできます。やる気がある人にはとても勉強になる働き方だと思います。
  • (待鳥)今後、人生はどういう方向へ向かうと思いますか。
  • (横田)私は悪くいうと飽き性、よくいうと色々なことに興味を持つ性格です。

    もうおなかいっぱいとなるまで、すごく頑張ります。やるだけやって「もう満足した。さあ、次いこう」と思う。この繰り返しです。

    興味が移ることと、大阪―岐阜を移動しながら働くことは関係しています。週の前半と後半に、移動をはさんでちがうことができる。これで気持ちが切り替わります。リフレッシュできる時間がとれるのです。

    今はもちろん「診療が好き」と感じています。知らないことが沢山あるし、いろんなことを勉強したい。勉強も実践も楽しいと感じています。

    でも自分の性格を考えると、たぶん一時的なことだと思います。あるとき急に、次のことがしたくなる。「好きなこと」は、どこかの時期できっと診療ではなくなります。40年後、患者さんを治療しながら「楽しい」とは思わないでしょう。ぼくの性格では、歯医者は続けられないと思います。今のように診療がメインの生活は、何十年も続きそうもありません。

    歯科医者に飽きてしまったとき、自分がやってきた知識や臨床を生かせるように上手にフェードアウトし、変えていけたらいいなあと思います。診療スキルを若手ドクターに教えるのか、まったく別のことに興味をもつのか。そこはわかりません。歯科医師をやめ、臨床をやめつつ、ほかに重きをおけるよう上手にシフトチェンジしていく。これが理想の人生です。
【Dr プロフィール】

準備中


医療法人LSC勤務 兼 医療法人LSC勤務​歯科医師 横田元煕